悲しみの棘

「…クイタイ」
ホブゴブリンの彼は、いつもどおり指導者の手伝いをするこ
とにした。大抵は雑用をすることで食欲は満たされていたが、
この日は何をすることもなく食べ物をあてがわれた。明晩人
間の村落を襲うということだったが、さておき食欲は満たされ
た。

果たして彼らは攻め込んだ。彼らが襲った村落の人間は必死
で抵抗し、戦いは激化した。熾烈な殺し合いの最中、彼は井
戸に落ちてしまった。何とか上れそうであったが、彼は井戸の底
で禍々しい形状の鎌を見つけた。それは歪んだ付与魔術師
の失敗作であった。

この鎌は相手に勝ちたいという欲求が増幅される、というよ
うに作られた筈だった。だが、実際にはさまざまな欲求が抑
えられなくなる呪われた鎌であり、使われなくなっていた。鎌
を手にした彼は、井戸から出ると、膨れ上がった食欲と殺戮
の衝動のままに、人間を屠っていった。

鎌の呪いは凄まじく、人間が目の前からいなくなると、彼は
他のゴブリン達に襲いかかっていった。しかし、同族を殺し
尽くすも満たされず、ついに彼は自身に刃を向けるに至った
残された鎌は、死体が地に還る頃、美しいエルフに拾われた
という。

Another Story in DOD3