脛削りの鉄

恐ろしいほどの武勇と、類い稀なる英知を持った猛将がいた。
彼の武勇は近隣諸国にまで鳴り響き、民の彼を崇める声が
通りを埋め尽くしていた。

しかし、その声望を恐れた王は彼を無実の罪で捕らえ、三日
もいれば我を失うといわれる、城の最深部の独房に閉じこめた。

そして三年後、王が牢に出向くと、そこには両の足が腐り落
ち、息も絶え絶えな男が蹲っていた。ただ、その王を睨み付
ける眼は未だ強い輝きを失ってはいなかった。王はその眼に
苛立ち、ついに自らの剣で彼を刺し貫こうとした。

王の剣が男に届く直前、彼は背後に隠し持っていた剣で、
逆に王を貫いた。その剣は、自らの足を切り落とし、その骨
を鍛えて造り上げたものであった。その後、彼は王の跡を継
ぎ、不動の王として名を馳せたという。