不死鳥の囀り

かつて魔術が栄えた時代、戦いの動向は軍の魔術師が握っ
ていた。魔術の効果には杖の力が関わっており、杖を巡って
戦いが絶えなかった。特に、更なる昔、古代の付与魔術師に
より造りだされた杖には、失われた大魔術が封印されているも
のも多かった。

ある魔術師が遺跡から一本の杖を見つけ出した。彼の魔力
自体はそれ程の力はなかったが、その杖の魔力は計り知れぬも
ので、彼はその杖の力で軍の要職に就き、一年も経つと将軍
直属の魔術師となっていた。

彼の赴く戦いは負けを知らず、彼の発言力は次第に大きな
ものとなっていたが、事件は起こった。彼が杖を発見した遺跡
から、全く同じ杖が何本も発見されたのだ。杖は各国に出回
り、戦いは凄惨なものとなっていった。

杖の力で地位を得た彼は、自らの力を高める努力を怠ってい
た。戦いにおいて各国の魔術師は、修行の成果と杖の力を存
分に発揮し、彼が赴いても勝てなくなっていった。年明けの人
事で、年十回程であった参戦を、各地を転戦し、毎戦参加
するよう言い渡された。既に彼は、ただの一兵士だった。彼の
晩年はこうして始まった。