痩躯の魔術師

痩躯の魔術師の骨と皮で作られている杖。魔術師は多くの弟
子を抱える高名な人物であった。魔術師は老い、自らの後継
者を弟子の中に求めた。

弟子の中に、鷹のように鋭い目を持ち、類希なる魔の才を持
つ青年がいた。魔術師は青年を後継者と定め、持てるすべて
の術を伝授した。青年は半年と経たぬ内にすべての術を極め
た。魔術師は大いに喜び、隠居の時まで青年に弟子の指導を
手伝わせた。

青年は指導のかたわらに次々と新しい術を生み出していった。
やがて、弟子達は魔術師よりも青年から術を学ぶようになっ
。魔術師は自らの世代が去ったことを悟り、青年に後事を託
そうとした。しかし、青年は丁寧に申し出を断った。青年は
旅に出、更なる術を求めるのだという。

その言葉を聞いた途端、魔術師は秘めていたすべての感情が
爆発した。…妬み、嫉み、愛おしみ…魔術師は知りうる最凶
の呪を青年にかけたが、魔術師を遥かに超えた青年は、簡単
に呪をはね返した。魔術師は全身の肉と臓物が溶け、腐敗し
た血と共に吐き散らして絶命した。
…骨と皮だけを残して。

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