焔の簧

その竜は死を前に後悔していた。なぜ卑しい人間の子を助け
ようなど思ってしまったのか…。しかも…それが竜狩りの罠
とは情けない…。意識が朦朧とする中、何者かが目の前で戦
っている…次に目を覚ますと竜は手当てを受けていた…

竜の命を救ったのは人間だった。その人間は王を目指してい
た。竜には興味のない話だが、この男なら相応しいのだろうと
思った。その時、男の胸に矢が突き刺さる。竜狩りの連中が仲
間を呼んだのだ。不意打ちを受け、倒れる男……。

応戦するも矢を受けた身体。次第に男の動きも鈍くなる。そこ
へ……肉の裂ける音……なんと!竜は己の舌をその爪で引き
ちぎっていた。男はその舌を剣に突き刺すと、剣先から灼熱
の炎が吹き出した。辺りの竜狩りどもは一瞬で灰となる。

『人間ごときに我が命を捧げるのは我慢ならぬが、おぬしを
死なせてまで生きようとは思わん……。』竜は…その場で目
を閉じた……。僅かな時間であったが竜と男の間に種族を超
えた友情があった。後に…男は“焔の簧”を手に王となった。

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