盗賊の極意

多くの盗賊達を纏めた、主に各国の汚い仕事等をしている、
大きな組織があった。組織の幹部には左目と呼ばれる男がい
た。 諜報活動を得意とし、一線ではなく、さまざまな裏工作
で組織に貢献していた。

左目には直接本人が戦うことをせぬ故、抜かれぬ剣があった。
持つだけで富をうむという魔法の剣であった。実際左目は裕
福であった。組織を監視し、裏工作や情報収集を行う彼には
多くの報酬が支払われていた。

しかしある時、組織の若い盗賊達は左目を取り囲んだ。言い
分は最前線で命を懸けている自分達よりも取り分が多いのが
不満だということだったが、狙いは左目の富であった。左目は
躊躇うことなく剣を抜いた。

かつて盗賊達を纏め上げた頃の、左目の姿がそこにあった。
若い盗賊達は、一瞬の地獄の後、屍の山となっていた。左目
はうんざりした様子で組織を抜けると言うと、古参の盗賊達
の静止も聞かず、稼いだ富とともに荒野に旅立ったという。