氷衝の拳

彼女の瞳を見つめただろうか?
輝く虹を閉じ込めたように潤む瞳は魅惑の輝きを放ち、
いとけなくも儚い鎖に囚われ逃げられず後はただ堕ちるだけ。

彼女の肌に触れただろうか?
真白の新雪のようにすべらかな肌は触れると融けるように柔く
二度と手離せずその虜となり心が朽ち果てるのを待つばかり。

彼女の声を聞いただろうか?
桃の果実のように瑞々しく可憐な唇からもたらされる死の宣告は
芳醇な美酒の香りさえ漂う背徳への誘い。

彼女に囚われた者は永遠に溶けない氷の中で命を捧げ続ける。
剣に血がこびりつき、拳が血に滲んでも戦うのは、彼女の為。
死すら厭わぬ彼らに向かって、彼女は黙って微笑むばかり。