貴正

初めて彼に出会った時、鼻を突く異臭と苛立ちさえ
覚えるみすぼらしい坊主姿からはとても名高い君
主の下に仕えていた武士とは思えなかった。

脇に差した愛刀がかろうじて彼の話が本当なのか
もしれないと思わせた。いったい何が彼をここまで
落ちぶれさせたのであろうか。

彼の話によると、お家騒動に嫌気が差し自ら浪人
になったのだという。しかし、見てくれに気を使
い剣の修行を怠った武士に世の中は厳しかった…。

「あの時…掬鯖錆家とうまくやっていれば……。」
そう言いながら彼はまた空をみつめる。
今もどこかで彼は途方に暮れているのであろう…。

Another Story in DOD2