昔、飛べない竜がいた。荒々しい高潔な心
を持つ彼は人間と交わることはなかった。だが
ある日、傷ついた若き騎士と一匹の竜が出会う。
竜は騎士を助けると、彼が目覚めるのを見届け、
その場を立ち去ろうとした。翼のない竜は、役立
たずと人に忌み嫌われていたからだ。
別れ際、騎士が言った。 「この恩は生涯忘れない」
時が流れ、年老いた竜は人間の軍勢に取り
囲まれる。竜が死を覚悟したその時……
「翼なき友よ!長く待たせたな!」あの時の騎士
が国王となり、数千の兵と共に現れたのだ。
竜は忘れていた牙を剥き出しにして吼えた。