ふと声が聞こえたような気がし目が覚めた。耳元で悪魔のよ
うな囁き声が聞こえた。まだ足りない。まだ足りないんだ。
間違いなく、その斧から囁くように声が聞こえた。
その日から魔術師は何かに憑依されたかのような顔つきに変
貌していった。その面影はかつて王国を恐怖に震え上がらせ
たあの義賊を思わせた。
斧の中で時を、ひたすら時を待っていた義賊は、力を解放し
ていった。さすがに魔術師も必死に抑えようとした。しかし
ついに義賊は魔術師の精神を乗っ取ってしまった。
外見は高名な魔術師であるが故に王宮の貴族達は、魔術師の
行いを止めることはしなかった。王国は無惨な終焉を迎えた。
しかし、魔術師は生きている…。