かつて世界で最も大きな剣と称され見る者をその迫力で圧
倒していた雄姿は見る影もなく、剣というにはあまりにも惨め
な塊に変わり果てていた。
剣が健在でいた時代。以前の持ち主は、この剣をとても人の
力では扱えない代物までに鍛え上げ、それでもまだ何かに取
り憑かれるように、刀身に使える素材を探し集めた。躯から
鎧を剥ぎ取り、武器を奪い骨をも抜き出しては、打ち合せ剣
の一部としていた。
次第に剣は斑に色を変え、剣先に行くほど赤黒く伸びていく。
その相反する色は、まるで隠り世と現世の境にも見えた。あ
る時、子供をさらい生きたまま製錬し剣に打ち込んだが、決
して交わることはなく、赤黒い鉄はすべて砕け散ってしまった。
剣は再び比類なき巨体を誇示させるために新たな刀身と、
その身を鍛えられる者を探し続けているらしい。