命を刈り取る死神への供物を捧げ、自らの延命を祈ったある
王が、若き美丈夫の首を落とす神器として造らせたこの斧は、
実に数百人の生贄の血を啜っている。正に死神の振るう武
器といっても良いだろう。
毎月の祭事において王は、二人の生贄を選出した。一人に斧
を振るわせもう一人の首を刎ねるのだ。そして翌月には、生
き残った方の生贄を、新たに選んだ生贄に殺させる。この祭
事は王の存命中絶えることなく続けられ、王は百五十年を生
きたと伝えられている。
最後の月。生け贄に選ばれた二人の男は互いに親友同士だ
った。泣きながら親友を殺めた男は、王に向かって言い放つ。
我が命、自ら死神に捧げ、友と黄泉路を逝こう…。男の首を
落とした斧は祭壇に突き刺さり、何者も引き抜くことは叶わ
なかった。生きすぎた王は壮絶な最期を遂げた。
その斧はユーリックの手に渡った。斧はまた、死神への供物
を、生贄を欲しているのだろうか。繰り返される流血の連鎖
は、断ち切ることは叶わぬのだろうか。
それを知るのは死神のみであろう。