イウヴァルトの長剣

とある砂漠の牢獄……独房の中。一人の男が張り付けにさ
れていた。愛するものを守るために戦い、そして破れ、己の未
熟さを知る。男は今、絶望の淵に立っていた。思い出す彼女
の笑顔……だが、その目に映るのは彼女の兄……。

意識が朦朧とし、死を覚悟した時、どこから入って来たのだ
ろうか、一人の少女が目の前に立っていた。少女の目は宝
石のような深紅の色。そして、可愛らしく微笑みながら、だが、
大人とも子供ともわからぬ、奇妙な声でこう語った。

『俺に…俺にもっと力があれば…』その赤き目は男の心を見
透かした。男の弱き心は、少女の僕となった。その先のこと
は……記憶にない……。朧げに覚えていることは愛する者が
目の前で自らの命を絶ったこと…、そして”再生の卵”の前
で……。

18年後……。男の長剣は、竜に育てられし少年の元へ渡る。
その剣先は愛する者の兄“隻眼の男”に向けられ、傍らには
大人になった“赤き目の少女”。紡がれた想いは複雑に絡ま
り、そして後世に語り継がれる……。