今より数年前、ノウェが騎士団の見習いとして入団する日、
前騎士団長より授かったのがこの剣である。
ノウェは封印騎士団に保護されて以来、前騎士団長オローが
父代わりとして、人としての生き方を教え込まれてきた。
豪放磊落で剣の腕も右に出るものはいない。オローはノウェ
の憧れでもあった。ノウェは思っていた。いつかはオローの
ような強い“人間”になるんだ、と。
そして、鍛錬を怠ることなくこの剣と共に歩んできた。
初陣の日。戦線での壮絶な命のやり取りに躊躇したノウェは
間一髪のところをオローに助けられたのだった。
戦場に慄くノウェに対してオローは語った。
「剣は命を奪う、しかし同時に仲間の命を救うものでもある。
大事なのはそれを使う者の心だ。それを忘れるな。」
そして現在。
ノウェはこの剣で命を奪うのか、それとも助けるのか、
剣もオローも何も語りかけはしない。