あるところに、息をするように人を殺す男がいた。
理由も理念も理屈も理想もなく、ただ人を殺し続けた。
人を殺したいわけではなく、男にはそれしか出来なかった。
ある日、男は路地裏で少女を取り囲む集団に出くわした。
男はいつもの様に特に理由もなく集団を殺戮しつくした。
残った少女を殺そうと振り返ると、
少女は涙を浮かべながら男に感謝していた。
人から感謝されたのは、男の人生で初めてだった。
男は自分のやったことに初めて意味を見いだすことができた。
男は満面の笑みを浮かべると、
感謝の気持ちを込めて剣を振り下ろした。
血溜まりに沈む少女を優しく見下ろした後、
男は自信に満ちた足取りで歩き去った。