ある名もなき寒村に、北の島国より司祭が訪れた。千里を見
通す大賢者と呼ばれた彼も、この遠方の地ではただの旅人で
しかなかった。
しかし彼らは、遠くからやってきた司祭を歓迎し、手厚くもてな
した。村人の心遣いに心打たれた司祭は、お礼として、一振り
の杖を贈った。
奇跡の力を秘めたこの杖で、今より豊かな生活を送ってほし
い。司祭の贈り物を喜ぶ村人を見ながら、司祭は村に幸せ
が満ちることを祈った。
しかし村人達は、腰の悪い旅人にあっさりと杖を譲ってしま
った。それを聞いた司祭は、村人達がすでに幸福であったこ
とを悟った。