この杖に嵌められている石は稀代の魔術の才能を持っていた
少年の魂を宿している。彼は平穏に人間として生きていくこ
とに満足せず、より高みを目指し全魔力をもって自ら石化し、
その存在を永遠のものとした。
ある時彼は自分を手にした元老が美しい女性であることを知
った。彼は彼女をたいそう気に入った。だが、月日は流れ彼
女は老い、死んでいった。彼の気に入っていた街並みも家も
好んだ木々の色彩も年が重ねられる毎にその姿を変えてい
き、やがて不毛の時代が訪れ、彼は悲しみに包まれた。
彼は人々の幸せを見守ることができるのと同じくその幸せ
がもろくも崩れ去ることも、そしてその繰り返される悲しみも
ずっと見続けなければならないのだ。そして、すでに石と化
した彼にはそれに手を差し伸べることもできず一人、泣き続
けなければならない。
永久を求めた結果の苦しみからいつ、少年は解放されるのか。
永久の中で永遠に刻まれていく時間は、彼を癒してくれるの
だろうか。あるいは、あなたが彼を眩しい光へと導いてくれる
なら。