遥か東の国に精霊と契約し、悪霊と戦う術師を王とする一族
がいた。王は普段から滅多に姿を見せず、霊の災いが激しく
なると、長期にり国に戻らぬため、王の顔も知ら民も少なくは
なかった。
そんな民の中に錫杖を持って敵を薙ぐ諸国にも名高き女兵士
がいた。ある年の桜の咲く時期の祭で、その女兵士が錫杖に
よる演武を王の前で披露することになった。王も女兵士もお互
いを知ってはいたが、姿を見るのは初めてであった。
二人はお互い一目で魅かれた。王は初めて出会うその女兵士
に、女兵士は初めて出会う王に。女兵士は代々伝わる錫杖の
先端の輪を刃に換え、より一層王に尽くした。王もまた民のため
に術を尽くして悪霊と対峙した。
しかし、悪霊の災いは激化する。町や村はことごとく滅び、
一族の都も遂に落ちることとなってしまう。女兵士と王は、
最後まで抵抗したが、明朝荒れ果てた宮殿には女兵士の
錫杖のみが残されていた。錫杖には短い詩が彫られていた。
離れども ともに逢い見ん 夢桜