背理の鎌

皆に慕われている若者がいた。川や谷を飛び回る若者は
風を操ることができたらしい。そんな明るく元気な若者にも
ひとつ気になっている事があった。

数年経ち父親が他界した。若者はとても悲しんだ。だが父
が亡くなる前に若者にある一言を残した。それは若者が昔
から気にしていた、自分からは口にしなかった母親のことだっ
たのだ。

「この地図の場所へ行きなさい」そう言い残した父親から
託された鎌と地図を手に取り、何かに誘われるよう地図が
示す場所を目指した。どれぐらい時間が経ったであろう。
森を抜け、海を越え、山を翔けてきた若者はすでに歩く気
力もない。ふとひとつの村が若者の目に入った。

長と呼ばれる者が迎えてくれた。この鎌は村の物らしい、
そして逢わせたい人がいると言った。綺麗な女性が入って
きて、若者は一目見て自分の母親だと感じた。若者はそ
の後母親と幸せに暮らしながら、風の精霊と人間の仲を取
り持ち共存が始まった。以後その鎌が使われることはなかっ
たという。

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