雨の日に目が覚めた。見上げると、自分がさっきまでいた
巣と兄弟達が見える。どうも落っこちたらしい。狭い巣だ
ったのでこうなるのは目に見えていたが…。体が濡れて冷
えてきた。生まれて二ヶ月短い人生。「こんなもんか…」
諦めかけたその時、親鷹が帰ってきた。彼らはちらりとこっ
ちを見たがすぐに兄弟達の方に向き、兄弟達に餌を与えだす。
かわいく鳴いたが見向きもしない。「いよいよだ」と思った
その時目の前に閃光その後に轟音、木が燃える。木に
落雷したらしい。もちろんその上には兄弟達がいる巣がある。
「逃げなければ」必死でバタバタと羽を動かす。何とかその
場を離れ振り返ると「巣」自体が炎に包まれていた。巣の
兄弟達の全身は赤く染まり雨の暗闇を照らす。
人生、次の瞬間がどうなるかわからない、後ろから気配を
感じる。振り返ると「ヒト」の姿が。雷の音に驚きやってきた。
「ヒト」は俺を抱き上げた。それが「ヒト」との運命的な出会
い。一年も経つと俺は立派な鷹になり、いつも「ヒト」の腕の
上にいた。「ヒト」は独り者で年は五十を越えていた。あく
までも想像だが「ヒト」は大酒飲みで貧乏だった。
「ヒト」とは二年を共にした。別れはあっさりしたもので
俺は「酒代」と交換に売られると同時に俺の一生はあっけ
なく終わる。売られた俺はあっという間に潰され肉塊とな
り胃袋へ。羽は「槍」の飾りに。俺の羽をあしらっただけ
の平凡な槍はそこそこの高値で売られたそうだ「鷹羽根の
槍」と名付けられて。くだらない。俺の人生で作った槍。
実に滑稽だ。