その鉄棍は、拷問部屋の片隅に置かれていた。命を奪わずに、
最大の苦痛だけを与え続ける拷問において、鉄棍の役目は最
後にやってくる。
手足をもがれ目鼻をえぐられ、最早苦痛に耐えきれずに死を
望む罪人にとって、鉄棍の一撃は焦がれる程に待ち遠しい。
彼らは血を吐きながら叫ぶ。「その鉄棍で、はやく殺してく
れ」求められ欲せられ、鉄棍は重々しく振りかざされる。
一撃で罪人を肉塊へと変え、鉄棍はまた、拷問部屋の片隅
に置かれる。そして、次の罪人の狂おしい求愛を、静かに待つ。
…血肉にまみれたそれは、肉塊そのものだった。