涅槃の短剣

神殿の祭壇に、ひっそりと奉られた短剣がある。それは、神
殿建立の際人柱となった少女達の、自害に用いられた聖
なる短剣だった。

神に命を捧げた少女は、神殿の柱と同じ数。それは、望ま
ず死んだ少女達の呪いで、刀身が醜くねじ曲がる程のもの
だった。

少女達の呪いか、司祭らは次々に事故や病で急逝した。
そして大きな戦の後、神殿は無人になった。

建立から数百年。神殿は今もあり続ける。祭壇の短剣は
月光を宿し、その光で少女達の墓碑となった神殿を、淡く照
らし続けていた。

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