オローの剣・鷹

ジスモア様配下の騎士が、オロー様の剣を盗もうとした時の
ことです。ジスモア様は騎士を叱責し、処刑なさろうとしま
した。騎士は嘆きました。「私は少しでもオロー様に近付き
たかったのです」事情をお知りになったオロー様は、憤慨す
るジスモア様を遮りながら、その剣について語り始めました。

「この剣はエルフの神話に語られる兄弟の破壊神の持刀を模
した物だ。兄は”鷹”と呼ばれ、智に優れた、弟は”獅子”と呼
ばれ、武に愛されていたという。二人がまだエルフであった頃
、人間との大きな戦いがあった。二人はエルフの魔将、猛将
として戦った。」

「鷹の智は竜語魔法すら操り、獅子の武は万軍を引き裂いた。
二人がエルフと人間との戦を鎮めるのに、そう時間はかから
なかった。戦が終わると、二人は智と武を試すものを失った。
…だが、二人は智と武を求め続けた。やがて鷹は世の理を超
え、破り、荒ぶる獅子は大地に、天に亀裂を入れた」

「エルフ達は、破壊神と化した鷹と獅子を“勇者の時間”に
封印した。億千の命と魂を使って。…おまえの罪は鷹、獅子
に類するものだ。ジスモアよ、剣に免じてこの者の処刑を許
してやってくれ」…オロー様の恩情により、騎士は許されま
した。その時のジスモア様の眼には、深く暗い影が差してお
り、今となってもその眼差しが忘れられません…。