聖帝の爪

緑豊かな生命溢れる土地に領土を広げた若い国があった。
けれどそこはかつて壮絶な戦が繰り広げられた呪われた場所。
年老いた家臣達は若く野心溢れる王を口々に諫めた。

「過去どのような戦があったとしても構わぬ。我が領土の糧と
なるのなら、茨の道であろうとも突き進むのみだ!」
若き王は宣言し、土地を狙う数多の国と攻防戦を繰り広げた。

豊かな土地は確かに国の物資を満たし、民の暮らしも潤った。
けれど終わらない戦に人々はやがて疲弊し、豊かな土地は変わらず
恩恵を与えるも、間に合わず国の物資も徐々に失われていく。

民と国の一部を失い手ひどい爪痕を残した戦を経てもなお若き王は
手放さなかった。愚王と誹りを受けようとも、国の為、民の為、
約束の地を失うことはできなかった。続きはまた別のお話。

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