終焉の警鐘

それは、ある槍の物語。ある男の手に渡った、ある槍の物語。
男は知らなかった。自身の刻に終わりが近付いていることを。
槍は知っていた。男の刻に終わりが近付いていることを。

男は愛していた。その槍を振るう度に鳴る儚くも美しい音色を。
そして槍はなき続けた。男に終わりを告げようと。
いつしか男は息絶えた。激しい戦場で愛する槍の音が鳴り響く中。

それは、終わりの物語。ある男の刻が終わった物語。
冷えた肉塊になってしまった男の横で、
槍は568番目の持ち主の死を、ただ静かに嘆き哀しんだ。

槍は次の持ち主を待っている。持ち主の命が失われる終焉の刻に、
再びその美しい音色を鳴らす日を。永遠に続く刻の中で、
幾度となく終わりを見てきた槍は今も待ち続けている。