天翔る蒼雷

森の奥深く泉のほとり。
ある日少年は、足にケガをした蒼い目の白馬と出会った。
少年は毎日白馬の元に通い、足の治療を続けた。

五日目には白く美しい毛並みを好きに触らせてくれるようになり、
十日目には深い蒼の瞳に信頼を込めて少年を眺めるようになり、
ある時突然白馬は姿を消した。

少年は怪我が治ったのだと喜び、一緒に走りたかったと泣いた。
その後白馬と再会することなく数十年経ち、少年は老人となった。
もう歩けなくなった老人は、孫に白馬の話を聞かせてやった。

「あの背に乗って共に駆けたかった」老人が口にした途端、
空に雲が広がり雷鳴と共に馬の嘶きが聞こえ、老人は消えた。
光芒の中、駆けあがる白馬の背に跨がる人影を見た者がいるという。