偽りの契約

ある村に嘘ばかりつく男がいた。
振るえもしない剣を腰からぶら下げ魔物を倒すと吹聴していたが、
嘘ばかりの男にやがて村人の誰も信用しなくなっていった。

ある日村に旅人が訪れ、魔物の棲家までの道案内を乞うた。
村人達が皆渋っていたところ、嘘つき男は道案内を名乗り出る。
「俺がお前を必ず魔物の元に連れて行ってやろう」

男は嘘ばかり教え、旅人はその度道に迷う。何度繰り返しても
旅人は男を疑うことなく迷い続け、とうとう男は根負けし、
魔物の元に案内した。男は咄嗟に魔物から旅人を庇いケガを負う。

「ついにお前を案内してしまった。嘘をつけない俺はお終いだ」
男はそうして息絶え、旅人は魔物を倒して英雄となった。
それから英雄は共に魔物を倒したという友の剣を腰に下げている。