雷王

むかしむかし、荒廃した大地に雷鳴轟く荒れた空が続く、まるで
地獄のような領地がありました。領主は次々に変わり、領民は
飢えと天からの落雷に命を落とし続けていました。

ある日若き勇猛な領主が現れ、この地を開拓し豊かな土地に
すると誓いをたてました。領民はみな疲れきっていたので
若き領主を誰も信じず、あざ笑う者さえいました。

若き領主は鍛冶屋に白銀の剣を作らせ、処女の娘達に
三日三晩祈りを捧げさせると、雷鳴と吹き荒ぶ嵐の中、
小高い丘で剣を掲げ地面に突き刺しました。

轟音と稲光が続く嵐の晩の翌朝、初めてその地は晴れました。
小高い丘に領主の姿はなく、一本の果実の木が生えていました。
白銀の剣を幹に包み込んだ木は、時々ごろごろと鳴るそうです。