少女の雫

白い石が隙間なく高く積み上げられた古い塔がありました。
その塔の中に、一人の少女が暮らしていました。
世話役が誰も話しかけないので、少女は言葉を知りません。

永い幽閉生活の中、世話役達は掟に従い誰も少女と目も合わさず、
まるで彼女が存在しないかのように振舞い続けておりました。
しかし、ある大飢饉の年に、村人達が塔に攻め込んできたのです。

世話役を一人残らず殺し、塔の最上階に棲む少女に武器を向け
「忌み子め」「飢饉はお前のせいだ」と罵詈雑言を口にしましたが
言葉を知らない少女は、何を言われているのか解りません。

例え殺意でも初めて自分に向けられた声に、少女は喜び、短剣で
柔らかな胸を貫かれた時も笑顔のままでした。これは村人の為に
神への供物として幽閉され、何も知らぬまま死んだ少女のお話。