その大剣は、斬った相手に苦痛を与えると評判だった。だから男は
どんなに重かろうとそれを背負った。恐怖を誇示することで無用な
争いを避けようと考えていたからだ。
戦わずとも男の名声は村中に轟いた。「あの恐ろしい剣を抜かせる
な」と皆が囁き合っていたからだ。己の思った通りの結果に男は心の
中でほくそ笑み、恐怖こそが平和を作ると考えた。
男は同じような武器を職人に作らせ、他の者にも持たせた。そうす
ることで互いに互いを牽制し、話し合いで争いを解決させようと目論
んだのだ。男の策は上手くいった……途中までは。
恐怖による牽制は、睨み合いでこそ威力を発揮する。では、誰かが
使ったら--答えは簡単だ。一夜にしてその村は死ぬよりつらい苦
痛の叫びで満ち溢れ、この世の地獄と化したという。