おきなさい おきなさい きょうはとてもたいせつなひ。○○○が
はじめて おしろに いくひ だったでしょ……という乱暴な母の声
が聞こえる。少年はイヤイヤ布団から抜け出す。
今日は16歳の誕生日。王様に会いに行く約束の日だ。いきなりの仕
事だと大変だから、と心配性の母親がヒノキで出来た棒を持たせて
くれた。こんな細い棒で何が出来るのだろうか?
お城への道中、母親は僕の使命の崇高さと、今日という日がいかに
大事かを延々繰り返していた。もう聞き飽きていたが、反論するとう
るさいので、いつものように黙っている。
その時、お城から同い年の友達が出てきた。精悍な眼差しはまるで
未来の勇者のようだ。お互い大変だよな。親の期待に応えるっての
は……俺も立派な大工になれるようにがんばるよ。