その職人が作る武器は飾りも無く色気も無く、おおよそ美術品とし
ての価値は無かったが、実戦ではよく斬れると評判で、求めるもの
が後を絶たなかった。
ふと、職人は思った。自分は人を斬ったことはない。試し斬りはいつ
も豚か牛の死骸だ。だが皆はよく斬れるという。人を斬るというの
は、いったいどのような手応えなのだろう。
職人は己の剣を手にして戦場に向かった。転がる死体を斬っては、
あまりにもすんなりと通る刃の威力に驚いた。全くもってつまらな
い。もっと--もっと斬った手応えが欲しい。
かくして職人は、手応えを求めて剣に加工を施した。斬られる側の
苦痛など微塵も考えず。だが、完成した剣は押し入った夜盗に奪わ
れ、職人はその身体で設計通りの苦痛を味わった。