三式戦術槍

飾り気のない槍は、機械のように正確に急所を貫いては、鈍い刃で
相手の骨を削り取る。その際に鳴るごりごりとした音とありえない程
の苦痛の悲鳴を、傭兵の女はとても好んでいた。

今日も今日とて至上の音楽を聞く為に、女は戦場を駆け巡る。あの
巨漢は脂肪がブルブルと鳴りそうだ。ああ、あの痩身は程良い骨の
音を鳴らすだろう。さて誰から貫こう?

いくつもの戦場を渡り歩いて、いくつもの体を貫いて。理想とする
叫びと骨の音を求めた女は、いつしか疲れ果てていた。ちょうど良
い塩梅に、柔らかい肉と骨はないものか。

ふと、横を見ると丁度良い肉の塊が転がっていた。切り刻むと心地
良い悲鳴を上げて女を満足させる。充実した笑顔で空を見上げた。
それが我が子である事は、もう思い出せなかった。