月光と闇

遥か昔に大火事に襲われた国を、全てを凍らせてしまう剣が救ったという伝説がある。永遠に続く業火の苦しみから人々を救ったとされていた。
その剣の周りには何千もの人型の氷像が佇んでいた。

世界中の武器を探し求める男が、剣の前に現れた。
男は剣に幾重にも布を巻いて、剣を持ち出した。しかし、背中の荷物に入れて運んでいると、知らず知らずの間に布もろとも男は凍ってしまった。

旅の巫女が剣の前に現れた。
巫女は神に祈りを捧げた後に剣を取ったが、指先からみるみる身体が冷えていく。巫女は神への冒涜の言葉を叫びながら凍っていった。

奴隷の女がある日、洞窟で岩を削る作業中に剣を見つけた。
女はこんな苦しい毎日を送るなら、剣を突き刺して楽に死にたいと思い剣の柄を握った。しかし、女は凍ることもなく、剣で自分の体を貫くことも出来なかった。
女が主に叩かれながら連れられていく様子を、月明かりに照らされた剣の刀身は映し続けた。

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