アイシテル。私は彼を心から愛していました。彼も私を愛していました。外で目が合えば私にだけ分かる合図を送り、私の贈るものは なんでも喜んで、「勿体無いから金庫にしまっておく」と言うくらい大事にしてくれました。自慢の恋人でした。
シンジナイ。私の親友が彼をたぶらかし、私から彼を奪ってしまいました。忽然と私の前から消えてしまった彼。残ったのは、私と、部屋に散乱した私の贈り物の数々。金目のものは、村の市場で売られていました。
ユルサナイ。彼は私を棄てたんじゃないわあの女に騙されてるのよ。彼はきっとまだ私に未練があるわ。だってあの女より私のほうが素敵ですもの彼を理解しているもの。早く、早く目を覚ましてねえ! あの女を引き離さないと、あの女を殺さないと!!ハヤク、ハヤク コロセ!
狂人と化した女はそのうら若き夫婦を、持っていた剣が歪む程殴りつけ、叩きつけ虐殺した。以来女は行方をくらまし、残されたのは、元は人だったとも思えない男女の肉塊と、真っ直ぐな刀身が醜く歪んでしまった剣。刀匠たちがいくら直そうとしても、その刃はもとに 戻ることはなかった。