ある国で王子の影武者をしている男がいた。
男は毎日の様に王子の代わりに公務を行っていた。
今日も仕事を終えて王子の元へ帰ると部屋に裸の女が寝ている。
女は王子の妹姫だった。
呆然とする男に、同じ顔の男はへらへら笑いながら行為に誘ってきた。
男は王子の妹姫に恋をしていた。
自分を兄として慕ってくれる妹姫も自らを愛してくれていると感じていた。
たとえ偽物の姿を通してでも、最低な王子のために命をかける男にとって、彼女は唯一の生きる糧だった。
王子が戦争で指揮を執ることになった。
役目のために命をも投げ出す覚悟の男に王子は言い放つ。
大将の首を獲れば妹と寝るのを自分と一回替わってもいいと。
男はへらへら笑う王子の口へ槍を突き刺した。
戦争が終わり妹姫を妃とした「王子」は、自分の顔や喉を傷つける行為をするようになった。
妹姫が彼を「兄さま」と呼ぶたびにそれは続いた。
やがて「王子」は自らの顔を焼き、口から槍を刺した状態で見つかった。
その焼けただれた顔はとても穏やかだった。