その民は恐ろしい程に勤勉だった。
必要も無いのに森を切り開き、動物を狩った。食べきれない食料を保存する技術を身につけ、不必要な程にお金を儲けようとした。しかし誰一人疑問を口にする者はいない。何故ならみんながそうしていたから。
その民は恐ろしい程に勉強した。
何にも使えないような数の計算や未来の予想を繰り返しては議論を繰り返していた。難しい言葉をいくつも生み出し、複雑な機械を沢山作ってはすぐに捨てていた。しかしそれを振り返る者は誰もいない。何故なら誰も気にかけていなかったから。
その民は恐ろしい程に従順だった。
朝日が昇ると誰に言われるでもなく同じ時間に同じ服を着て、小さな部屋で息苦しそうに仕事をしていた。しかし誰一人文句を言う者はいない。何故ならそれ以外に何をしたらいいのか判らなかったから。
働き過ぎたその民は、森を失ってしまい砂の上で暮らすようになった。
頭の良すぎたその民族は、他の民族の誰も判らないような言葉でしか会話出来なくなってしまっていた。
大人し過ぎたその民は、次々と作られる法に逆らう事も出来ずに数万もの掟に囲まれて暮らすことになった。