壁にかけたままの盾は埃をかぶっていた。
鞘に収めたままの刃は錆びていた。
使わない技を忘れてしまっていた。
鍛える筈の身体を放ったままにしていた。
律する心を失っていた。
何も言わずに済むと思っていた。
他人の暴力を見て見ぬふりをしていた。
どうせ変わらないと放り出していた。
大きな力には逆らえないと思っていた。
信じる心を嘲笑っていた。
下らない奴等だと笑っていた。
そうやって逃げ込んでいた。
所詮無理だと諦めていた。
愚かしさと醜さを嘆いていた。
生きる意味を失っていた。
大切な人を見失っていた。
その優しさを信じられずにいた。
心を引き裂く悲しみを救えずにいた。
小さな幸せを守る勇気を忘れていた。
この言葉が届かないと、そう思っていた。