我は産声を上げる。
熱く熱せられた鉄がその身を形作る時。鋼の槌が我が身を打ち叩く時。
薄闇の中に燃えさかる深紅と、鋼の火花の照り返す白光が見守る中。約束された業苦を与える為に。
我は鉄塊と呼ばれし武器。轟音から生まれ落ちる刃。
我は死を与える。
敵の畏怖と悲鳴を喜びに変え、その鉄の肌に臓物を飾りつけて。
人の命を奪う時、暗い喜びが我が身を満たした。
人の身を押しつぶす時、自らの生まれた意味を知った。その歓喜を伝える為に、人を殺し続けた。
我は鉄塊と呼ばれし武器。我は殺す。殺す。殺す。殺す。
我は砕かれる。
戦いと残血の果てに、憎悪と怨念がこの身を引き裂く時。
魔の理が引き起こす力と、飛び散る鉄の牙が血風を巻き起こす。赤い竜と戦いしその日々。
我は鉄塊と呼ばれし武器。呪われし鋼は眠りの黒へと沈む。
我は夢を見ている。
それは、小さな蝶の夢。ちいさな雨の中、懸命に飛ぶ蝶の夢。
我は鉄塊と呼ばれし武器。深い夜の中、叶わぬ夢を今も見ている。