遥か東の国の都に歌を詠むことで生計を立てて
いる歌人がいた。自分の才能に限界を感じ始
めていた彼は、ある日妖怪と契約をしてしまう。
妖怪の力により、次々と新しい歌を発表する歌
人。どの歌も素晴らしく、都中の評判となる。
ついには将軍家のご指南役にまで昇進した。
ある日、妖怪が再びやってきて歌人に言った。
「おまえの一生分の才能はもう使い果たした。お
まえは二度と歌を詠むことはできないだろう。」
妖怪の言ったとおり、彼は一行の歌も詠めなくな
ってしまう。世を儚んだ彼は、自害してしまった。
その剣は今でも彼の血で鈍く光っているという。