ある日、少女が住んでいた村が盗賊に襲われた。少女は家族を守
る為に、父が山中で拾ったという剣を手に取り、生まれて初めて人
を斬った。血にまみれた娘に、家族は怯えた。
村が盗賊に襲われたのはその一回きりだった。その後十年二十年が
経ち、守った家族が老いていく中で少女一人だけが年を取る事がな
くなった。村人は少女を次第に疎んでいった。
居場所のなくなった少女は村を出る。何年もの歳月を掛けて放浪の
旅を続け、多くの国を渡っていった。やがて少女は無類の剣豪とし
て世に名を馳せる事になる。
無限の命と、強力な剣そして長年の知恵。力を得た少女は一国の女
王にまで上り詰め、何不自由もないように見える。だが少女は手に
入れていない。あの時欲しかった父の優しさだけは。